VVS（ベリーベリースライトリーインクルーデッド）のダイヤモンドとVS（ベリースライトリーインクル―デッド）のダイヤモンドはクラリティに違いがあり、他の要素が同等の場合、価格においてかなりの違いが出ることがあります。こうした違いを知ることは、婚約指輪を賢く購入するうえで役立ちます。
この記事の内容は次のとおりです。
VVSのダイヤモンドとVSのダイヤモンド：その違いを理解しておく理由
ダイヤモンドのクラリティ：ブレミッシュ（傷）とインクル―ジョン（内包物）
GIAによるダイヤモンドのクラリティグレード決定方法
VVSダイヤモンドとは？
VSダイヤモンドとは？
VVSダイヤモンドとVSダイヤモンドのどちらを選ぶべきか？
GIAダイヤモンドグレーディングレポートを入手し、正確で偏りのないクラリティグレードを知る
11に分かれたクラリティグレードを示すGIAのダイヤモンドクラリティスケール
VVSのダイヤモンドとVSのダイヤモンド：その違いを理解しておく理由
購入する婚約指輪のためのダイヤモンドの比較をされた方であれば、GIAのダイヤモンドの品質の4C（ カラー、クラリティ、カット、カラット重量）はもちろんすでにご存じでしょう。ダイヤモンドの品質とサイズが価格に関連していることにはお気づきですね。カラー、クラリティ、カットにおいて高いグレーディングを受ける大粒のダイヤモンドは希少性が高いため、高価になるのです。ですが、同じサイズのダイヤモンドを比較したとき、肉眼ではたいてい認識が不可能な非常に小さなグレードの違いでさえ、価格に大きな影響を与えることにも気づかれたのではないでしょうか。
このブログではダイヤモンドのクラリティグレードに焦点を当て、特に、インターネットで多くの疑問や話題を生んでいる2つのグレーディングのカテゴリー、VVS（ベリーベリースライトリーインクル―デッド）とVS（ベリースライトリーインクル―デッド）について詳しく見ていきます。この2つはそれぞれさらに2つに分類され（VVS1 とVVS2、VS1とVS2)、その決定的なクラリティ特徴がダイヤモンドをフェイスアップで10倍の倍率で見たときにどれだけ容易に観察できるかを示します。VVSダイヤモンド、VSダイヤモンドのいずれにも、ほとんどの場合肉眼では見えないクラリティの特徴があります。しかし、これらのダイヤモンドの価格差は最大30%にも及ぶことがあります。例えば、卸売業者および小売業者の大半が利用しているダイヤモンド価格表2018年版によれば、1.00カラット(ct)、Dカラー、VVS1のダイヤモンドならば、同じ重量とカラーを持つVS1のダイヤモンドよりも20%から30%高価になります。1.00ct、G～HカラーのVVS1ダイヤモンドは、同様のVS1またはVS2ダイヤモンドよりも15～20%高くなることがあります。
こうした品質のダイヤモンドを購入する場合、価格差は非常に大きくなるのです。それが、VVSダイヤモンドとVSダイヤモンドという2つのカテゴリーのクラリティグレードについて、そしてその二つの違いを決定する要因が何かについて、知って損は無い理由です。
1.00ct、Gカラーでエクセレントカットのラウンドブリリアントの、この2つのダイヤモンドの差が見分けられるだろうか？左はクラリティグレードがVVS1のダイヤモンドで、右のVS2のダイヤモンドよりも価格が15%高い。提供：Blue Nile（ブルー・ナイル）
ダイヤモンドのクラリティ：ブレミッシュ（傷）とインクル―ジョン（内包物）
ダイヤモンドのクラリティとは、形成からカッティング、研磨、日常の着用に至る過程でダイヤモンドに生じる内部および外部の特徴を指します。これらは誤って「マーク（跡）」や「フロー（傷）」と呼ばれることもありますが、正しい用語は「クラリティの特徴」で、一つ一つのダイヤモンドを識別する固有の特徴となります。
クラリティの特徴には、ブレミッシュとインクル―ジョンの2種類があります。ブレミッシュとはダイヤモンドの表面に限定される外部特徴のことです。エキストラファセット、ナチュラル（原石結晶表面の痕跡）、ポリッシュラインやファセットの境界線にできるアブレージョン（摩耗）などがその例です。
インクル―ジョンは内部の特徴で、ダイヤモンド内部に完全に閉じ込められているか、表面から石の中へと入り込んでいるものを指します。一般的なインクル―ジョンには、フェザー、結晶、ピンポイント、クラウド（ピンポイントの集合体）、インターナルグレイニング、ニードル、インデンテッドナチュラル（ダイヤモンドの表面から下に入り込んでいるナチュラル）などがあります。これらを含むクラリティ特徴の写真および詳細な説明は、GIAのブレミッシュとインクル―ジョンに関するブログをご覧ください。
通常、ブレミッシュはクラリティグレードの上位2つのカテゴリー（フローレスおよびインターナリーフローレス）にしか影響を及ぼしませんが、インクル―ジョンはすべてのグレードに影響します。ですからVVSダイヤモンドとVSダイヤモンドについては、インクル―ジョンに絞って見ていきます。
ピンポイントはダイヤモンド内部に閉じ込められた非常に小さい結晶の内包物で、10倍に拡大すると小さな斑点のように見える。このダイヤモンドには、数個のピンポイントとその上に大きい内包結晶が含まれている。写真：John I. Koivula/GIA。提供：K. R. Gems & Diamonds International（K.R.ジェムズ&ダイヤモンド インターナショナル）
クラウドは多数のピンポイントから成っている。ピンポイントは個々に識別するには小さすぎるが、集まると曇った外観を呈する。写真: John I. Koivula/GIA
クラリティ特徴が少ない、または全くないダイヤモンドは非常に希少です。そのため、通常他の要素が同等の場合、少量の、または小さく気づきにくいインクル―ジョンを含むダイヤモンドは、より大量の、または大きく目立つインクル―ジョンを含むダイヤモンドに比べ、より高値が付きます。すべての要素が同じ場合、VVSダイヤモンドがVSダイヤモンドに比べて高価になるのはそのためです。
しかし、クラリティグレードは記号や数字だけで決まるものではありません。VVSとVSのグレードの違いを理解するため、GIAでのダイヤモンドのグレーディング方法と、ダイヤモンドの様々なカテゴリーが意味するものを見ていきましょう。
このVVS1のクラリティを持つ3.30ct、アッシャーカット、Hカラーのダイヤモンドの美しさは、目に見えるインクル―ジョンがあれば台無しになる。提供：LangAntiques.com
GIAによるダイヤモンドのクラリティグレード決定方法
GIAのクラリティグレーディングシステムでは、10倍を標準倍率として拡大に使用し、ダイヤモンドのクラリティグレードを決定します。GIAのダイヤモンドグレーダーは、その熟練した目と拡大顕微鏡を使用してダイヤモンドを検査しますが、最終的には10倍の標準ジュエラー用ルーペを使用して見えたものを基にグレーディングを決定します。
クラリティグレード決定に際しては、グレーダーは5つの要因を考慮します。
- サイズ：他の要素が同等の場合、ダイヤモンドのサイズに比してインクルージョンまたはブレミッシュが大きいほど、そしてそのために目に見えて分かりやすくなるにつれ、ダイヤモンドのクラリティグレードは低くなる。
- 数：他の要素が同じ場合、フェイスアップで10倍の拡大で目に見えるインクルージョンや、インクルージョンの反射またはブレミッシュの数が多いほど、クラリティグレードに与える影響は大きくなる。
- 場所：インクルージョンまたはブレミッシュの位置を指す。インクルージョンがテーブルの中央に近いほど、クラリティグレードに与える影響は大きくなる。
- レリーフ：インクルージョンまたはブレミッシュとダイヤモンドとのコントラストを指す。一般的に、クラリティ特徴がダイヤモンドの輝き、暗さ、あるいは色と異なる度合いが強いほど、確認されやすくなり、またクラリティグレードに与える影響が大きくなる。
- 性質：グレーダーは特徴の種類と、それがダイヤモンドの外観に与える固有の効果を見る。言い換えれば、インクルージョンやブレミッシュの中には、他のものよりもクラリティに与える影響が大きいタイプのものがある。
GIAのグレーダーがダイヤモンドのクラリティ特徴をすべて識別し、上記の5つの要因を考慮した後、以下の基準に基づいてダイヤモンドのクラリティグレードが決定されます。
| クラリティグレード | 10倍の拡大での見えやすさ |
| フローレス(FL) | 10倍の拡大でインクル―ジョン、ブレミッシュがともに見られない |
| インターナリーフローレス(IF) | 10倍の拡大で、インクルージョンがなく、ごく僅かなブレミッシュがわかるのみ |
| ベリーベリースライトリーインクル―デッド(VVS1およびVVS2) | 10倍の拡大で確認するのが極端に困難 (VVS1) から非常に困難 (VVS2)な微小なインクルージョンがある |
| ベリースライトリーインクル―デッド(VS1およびVS2) | 10倍の拡大で、わかりにくい(VS1)からある程度わかりやすい(VS2)範囲の小さなインクル―ジョンがある |
| スライトリーインクル―デッド(SI1およびSI2) | 10倍拡大で確認するのが容易 (SI1)から大変容易 (SI2) だが、肉眼では通常見えない明瞭なインクル―ジョンがある |
| インクル―デッド(I1、I2、I3) | 10倍の拡大で容易に確認でき、肉眼で確認できることも多い明らかなインクル―ジョンがある |
ペアシェイプのペアともう一石：プラチナの婚約指輪で、ペアシェイプの2つのカラーレスダイヤモンドが、1.54ctのファンシーインテンスイエローダイヤモンドを引き立てる役割を果たしている。3つのダイヤモンドのクラリティはすべてVVS2。提供: 1stdibs.com
VVSダイヤモンドとは？
上のクラリティグレード表のとおり、VVSダイヤモンドには、10倍の拡大で確認が極端に困難（VVS1）から、非常に困難（VVS2）な微小なインクルージョンがあります。VVSグレードを決定する典型的なインクルージョンには次のようなものがあります：
- 10倍の拡大で、パビリオン（研磨済み宝石のガードルよりも下の部分）からのみ確認できる、またはフェイスアップでの確認が極端に困難なピンポイント、ニードル、インターナルグレイニングまたはクラウド (VVS1)
- 10倍の拡大で、フェイスアップで確認するのが非常に困難なピンポイント、ニードル、インターナルグレイニングまたはクラウド (VVS2)
- 微小な、表面に達するインクル―ジョン（チップ、キャビティ、フェザー、ブルーズ、ベアディング、インデンテッドナチュラル等）
肉眼で確認できるインクル―ジョンを持つダイヤモンドが、クラリティグレードVVS1またはVVS2にグレーディングされることはありません。
インターナルグレイニングは、結晶の成長過程での異常により生じるインクル―ジョンで、直線状、角度のついた、またはカーブ状の外観を呈する。このダイヤモンドの場合、インクル―ジョンの性質とパビリオンでの位置から、クラリティグレードがVVS1となった。同じインクル―ジョンがダイヤモンドのテーブルの下にあったならば、クラリティグレードはさらに低くなっていたであろう。写真：Shane F. McClure/GIA
このダイヤモンドのクラリティグレードはVVS2である。10倍の拡大でフェイスアップでの確認が非常に困難な小さなフェザーを、赤い四角で囲んでいる。フェザーはダイヤモンドの4つの八面体面の1つに沿った割れ目から生じている。フェザーは白く見える場合と、透明な場合がある。この例では、ダイヤモンドがセットされるときにフェザーはプロングで隠される可能性が高い。写真：GIA
VSダイヤモンドとは？
VSのダイヤモンドには、10倍の拡大での確認が困難 (VS1) から、確認がある程度しやすい(VS2) 範囲の小さなインクル―ジョンがあります。あらゆる種類のインクル―ジョンの可能性がありますが、いずれもダイヤモンドのサイズに比して非常に小さいものです。グレーディングを決定する一般的なインクル―ジョンとしては、結晶、ノットやはっきりと識別できるクラウド、あるいはフェザーやキャビティー、インデンテッドナチュラルのような表面に達する小さな特徴などがあります。ごく稀に、大粒のVSの石に肉眼で識別できるインクル―ジョンが含まれていることがあります。
エメラルドカットのダイヤモンドは、さながら澄みわたった氷のプールを見ているようである。エメラルドカットが、このプラチナの指輪のセンターストーン（クラリティVS1、Fカラー、5.48ct）のようにクラリティの高い宝石で最も美しく見えるのはそのためである。2つのシールドカットのサイドストーンと無色のダイヤンドのヘイローもこの指輪の特色である。提供：Raiman Rocks, Inc.
このダイヤモンドのクラリティグレードはVS1である。10倍の拡大でフェイスアップでの確認が困難な小さなフェザーを、赤い四角で囲んでいる。ただし上のVVS2の例とは異なり、このフェザーはダイヤモンドのテーブルの下にあり、セッティングで隠すことができない。写真：GIA
このダイヤモンドのクラリティグレードはVS2である。フェイスアップで10倍の拡大で石を観察したときに容易に確認できるテーブル付近のフェザーを、赤い四角で囲んでいる。写真：GIA
このカルティエの婚約指輪は、VVS2のマーキスカットダイヤモンドの一人舞台となっている。提供：LangAntiques.com
VVSダイヤモンドとVSダイヤモンドのどちらを選ぶべきか？
VVSダイヤモンドとVSダイヤモンドの専門的な違いが理解できたところで、疑問が生じていることでしょう。より高いクラリティグレードはそれだけ費用をかける値打ちがあるのだろうか、と。一方では、ほとんどすべてのケースにおいて、低い方(VS)のクラリティは肉眼ではそれとわかりません。しかし他方では、より高いクラリティ(VVS)は、クラリティの低い方の石に比べて完ぺきに近く、希少性が高いダイヤモンドであることを表しています。
人によっては、ダイヤモンドのカットや形状が意思決定の材料となることもあります。エメラルドカットのような、大きい長方形のファセットを特徴とするステップカットダイヤモンドは、高いクラリティグレードの場合にその美しさが最も引き立ちます。ハートやマーキスのようなブリリアントカットについても同じことが言えます。あるいは純粋にシンボルとして決定する、という人もいます。高いクラリティのダイヤモンドは、素晴らしい愛の得難さと純粋さを表すともいえるでしょう。
しかし、自分にとって最高のダイヤモンドを選ぶ作業は、クラリティ、カット、カラー、カラット重量の間での選択が一続きになったものです。クラリティは重要ですが、それだけがダイヤモンドの外観の美しさを保証するわけではありません。婚約指輪を購入する人のほとんどがそうですが、予算も考慮に入れなければならないとき、VSクラリティを選択することにより得られる節約分で、より大きい、あるいはより良いカラーやカットのダイヤモンドを手に入れることができるかも知れません。
GIAダイヤモンドグレーディングレポートは、自信を持ってダイヤモンドを購入するために必要な情報を提供する。
GIAダイヤモンドグレーディングレポートを入手して正確で偏りのないクラリティグレードを知る
いずれのクラリティグレードを選ぶにせよ、GIAによるダイヤモンドのグレーディングが必要でしょう。これにより、カラー、カット、カラット重量とともにクラリティの評価が正確かつ客観的で、GIAが開発した厳密なグレーディング基準を満たすことが保証されます。
ダイヤモンドのテーブルの下にある小さな結晶により、この石のグレードはVS1となっている。イラスト：GIA
このVS2のダイヤモンドのクラリティプロットは、グレードを決めるインクルージョンや、テーブル下の数個の結晶、パビリオンのキャビティなどを示している。イラスト：GIA
GIAダイヤモンドグレーディングレポートには、ダイヤモンドのクラリティグレードだけでなくプロット図も含まれています。プロット図では、10倍の拡大でテーブルおよびパビリオンから観察したインクル―ジョンおよびブレミッシュを図解し、おおよその形状とダイヤモンド上の位置を示しています。図はグレーディング時のダイヤモンドの状態を記録する役割を果たし、ダイヤモンドのクラリティグレードの根拠となります。また、ダイヤモンドがフローレスでない限り2つとして同じダイヤモンドのプロット図は存在しないため、鑑別の手段ともなります。
婚約指輪を選ぶということは、数多くの細かな決断を行う必要に迫られることを意味します。経済的な検討事項に加え、多くの感情や象徴性が婚約指輪に込められます。ですが、最後にはあなたにしか下せない決定に落ち着くことになります。愛を込めて贈られた贈り物に「間違った」答えなどない、ということを覚えておいてください。
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