南アフリカのダイヤモンドは、近代ダイヤモンド産業の生みの親です。その実現に一役買ったのは二人のティーンエージャー、エラスムス ジェイコブズとセシル ローズでした。どのようにしてジェイコブズが南アフリカで最初のダイヤモンドを発見し、ローズがダイヤモンド帝国を築いたかを学びましょう。 この記事の内容は次のとおりです。
エラスムス ジェイコブズの意外な発見
セシル ローズのダイヤモンド帝国
南アフリカ産ダイヤモンドはどのようにしてダイヤモンドの歴史を変えたか
有名な南アフリカ産ダイヤモンド
ダイヤモンドと社会貢献
南アフリカ産ダイヤモンドは倫理的か?
エラスムス ジェイコブズの意外な発見
南アフリカ北ケープ州でダイヤモンドを最初に発見したのは十代の若者達、農場主たちと一人の羊飼いです。そしてこれが近代ダイヤモンド産業の発端となりました。最初の重要な南アフリカ産ダイヤモンドは1866年、農場主の息子であるエラスムス ジェイコブズによって発見されました。エラスムスはオレンジ川の土手付近で友人たちと「きれいな石」を集めていました。近所に住むシャルク ファン 二―ケルクは、コレクションの中の特に光輝く小石に興味をかき立てられ、エラスムスの母親に石を買いたいと申し出ました。母親はニーケルクに無料で石を与えました。石は持ち主を数回変えた後、アマチュアの地質学者の手によって21.25カラット(ct)のダイヤモンドであることが判明しました。この大粒の南アフリカ産ダイヤモンドは、「見つけたぞ」という意味のユーレカ(Eureka)と名付けられました。
ほとんどの人はこの発見を信じなかったため、ある羊飼いが大粒の石を発見する1869年まで人々の関心が向くことはあまりありませんでした。羊飼いはまず、この石と引き換えに寝る場所や朝食を得ようとしました。これは誰からも断られます。最後に、エラスムス ジェイコブズの輝く石に最初に気づいた人物、シャルク ファン 二―ケルクのところへ行きます。二―ケルクは、小石と引き換えに自分が与えられるほとんどのもの、馬1頭と雄牛10頭、そしてヒツジ500頭を羊飼いに与えました。この賭けは成功しました。石は83.50カラットの南アフリカ産ダイヤモンドであると判明し、二―ケルクはこれを11,200ポンド(当時の56,000米ドルに相当)で売りました。彼がジェイコブズに与えたものの約100倍の価値がありました。Star of South Africa(南アフリカの星)と名付けられたこの石はイギリスに渡り、47.69カラットのペア シェイプにカットされて、ダドリー伯爵がこれを購入しました。
この南アフリカ産ダイヤモンドの発見は、石が見つかった地域でのダイヤモンド ラッシュを引き起こしました。1871年にデビア兄弟の農場を含め近隣の農場でもさらにダイヤモンドが続々発見されると、暑く不毛であった土地が、あっという間にキンバリーという名の人口50,000人を擁する街に生まれ変わりました。
セシル ローズのダイヤモンド帝国
もう一人の少年、進取の気性に富んだ17歳のイギリス人セシル ローズは、後に近代ダイヤモンド産業と見なされるようになる事業を興しました。ローズは綿農場を始めるために南アフリカに向けて旅立ちました。農場経営が失敗したとき、キンバリーのダイヤモンド採掘場を訪ねたローズは、ポンプを使用した鉱山での排水で生計を立てるようになりました。18歳になるまでに、採鉱権の購入を始めるのに十分な蓄えができていました。鉱山労働者たちは、ローズのような事業家に採鉱権を売却しました。深く掘り進めるにつれて地盤は固くなっていき、個人経営の鉱山労働者にとって採鉱は危険で費用がかかりすぎるものとなっていたからです。ローズはロスチャイルド家の支援を得て、間もなくデビアスの採鉱権をすべて手に入れました。1888年までに、キンバリーのダイヤモンド鉱山もすべて買い取りました。ローズは保有する採鉱権をすべて合わせ、De Beers Consolidated Mines Ltd.(デビアス コンソリデーテッド マインズ社)を設立しました。同社は後にダイヤモンドを扱う世界的な独占企業となります。
南アフリカ産ダイヤモンドはどのようにしてダイヤモンドの歴史を変えたか
南アフリカのダイヤモンド ラッシュによって、二つの変化がありました。1.
世界のダイヤモンド供給量 2.
ダイヤモンドの採掘法。南アフリカでダイヤモンドが発見された後、10年以内に世界のダイヤモンド産出量が10倍に膨らみました。南アフリカでの発見前、世界のダイヤモンド供給量は限られていました。歴史的に、世界で最も主要な産地はインドでした。その後、1700年代にブラジルが主要な産地としてダイヤモンド業界に登場しました。しかし、この二か国で産出されるダイヤモンドは漂砂ダイヤモンドで、母岩から川を伝って下流に運ばれたものでした。これらは希少かつ見つけるのが困難なダイヤモンドで、君主や王族に優先的に使用されていました。
南アフリカで産出された初期のダイヤモンドも漂砂ダイヤモンドでしたが、後に母岩のキンバーライトからも発見されました。母岩からの発見は、ダイヤモンドが以前よりもより集中して大量に採掘できる可能性があることを示唆しました。これにより、大規模な露天掘りを行う価値が生じ、ダイヤモンドの採掘法が変わりました。
南アフリカのダイヤモンド ラッシュの時代に、インドで過去2,000年間に発見されたよりも多くのダイヤモンドが見つかりました。ダイヤモンドが、裕福な中産階級にも初めて手の届くものとなったのです。それから一世紀以上経過した今では、ダイヤモンドは人気の高い、入手可能な宝石となりました。現在世界で6番目のダイヤモンド産出量を誇る南アフリカは、今もダイヤモンド業界の圧倒的な存在であり続けています。
有名な南アフリカ産ダイヤモンド
ダイヤモンドと社会貢献
ダイヤモンドは、発見されて以来、他の鉱物資源と並んで南アフリカ経済の活力源となっています。南アフリカの鉱山では、2018年に約1,000万カラットのダイヤモンドを産出しました。これは12億米ドル(約1320億円)超に相当します。ダイヤモンド業界は、南アフリカで数万人分の雇用を創出しています。2018年には、ダイヤモンド採鉱だけでも16,000人が雇用されています。またダイヤモンド会社が支払う税金は道路、学校、病院の建設に役立てられています。その結果、採鉱が行われている町では、そうでない地域と比べ、より多くの子どもたちが学校に通っています。
また、多くのダイヤモンド会社が採鉱が行われている地域に貢献しています。デビアスから分社化されたForevermark(フォーエバーマーク)社では、鉱山付近に学校や病院を建設したほか、国連女性機関との協力により、企業活動や、STEM(科学、技術、工学、数学)分野に携わる女性たちを支援しています。デビアスはまた、ライオン、象、ヒョウ、アフリカン ワイルド ドッグなどが生息するベネチア リンポポ自然保護区を創設しました。Anglo American(アングロ アメリカン)社は、中小企業経営者の事業の発展を支援するZimeleプログラムに資金援助をしています。これが結果として、より多くの雇用を創出しています。
南アフリカ産ダイヤモンドは倫理的か?
倫理にかなった方法で採掘されたダイヤモンドを求める消費者は、南アフリカ産ダイヤモンドの購入を検討すべきでしょう。南アフリカのダイヤモンド鉱山は、安全性や環境基準において世界でもトップレベルです。また、賃金もこの業界内で高水準です。南アフリカはまた、キンバリー プロセスも導入しています。これは「紛争」ダイヤモンドが、ダイヤモンドの主流市場に流入するのを防ぐために国連が設立したグローバルな制度です。南アフリカのキンバリーに因んで名づけられたこのプロセスは、世界で産出されるダイヤモンドの99.8%が紛争ダイヤモンド以外のものであることを保証するのに役立っています。
GIAでは、消費者がダイヤモンドの産地を知る助けとなるよう、南アフリカ、カナダ、ボツワナ、ロシア、ナミビア、レソトのダイヤモンド鉱山会社と協力し、こうした国々のダイヤモンドの産地を確認しています。これにより、購入したダイヤモンドが採掘された国の鉱山労働者を支援しているのを知ることができ、消費者は安心してそのダイヤモンドを身に着けることができます。
GIAのダイヤモンド原産国判定方法
ダイヤモンドの原石が、選定された一部の鉱山会社から、記録後に密封した不正開封防止小包でGIAに送付されてきます。GIAは、その原石のデータと画像を収集し、分析します。原石はカッティングと研磨のために送られ、その後GIAに返送されます。GIAは原石の分析時に識別されたマーカー(指標)とデータを使用して、研磨された各ダイヤモンドをその原石と科学的に照合し、ダイヤモンドの原産地を確認します。
ダイヤモンドの産地は、GIA ダイヤモンド オリジン レポートに記載されます。これにはダイヤモンドの品質の4C(カラー、クラリティ、カット、カラット ウエイト)に関する完全かつ公平な評価と、ダイヤモンドのインクルージョンを示したプロット図が含まれています。より安全性を高めるため、ダイヤモンドには固有のレポート番号がレーザー刻印されています。ダイヤモンドが通ってきた道筋と、石の購入が産地に与える影響について興味のある方は、ダイヤモンド オリジン アプリで、ダイヤモンドの原石および研磨された状態をフルカラーの画像で見ることができるほか、ダイヤモンドの原産国に関する充実した内容をチェックすることができます。
石が持つきらめき同様に、ダイヤモンドの旅はそのすべてが驚異に満ちています。GIAダイヤモンド オリジン レポートは、地中深部からジュエリー ボックスに至るまでのダイヤモンドの旅と、それに関わる産地の人々についての素晴らしい物語を語ってくれます。
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