アールヌーボーの婚約指輪は、際立つ美しさがありますが、非常に稀です。 ウィップラッシュラインやエナメル、カラーの宝石など、その時代からのデザイン要素を利用して、ロマンチックなアールヌーボースタイルをご自身のリングに取り入れることなら可能です。 こちらでご説明しましょう。
1890年代から1910年代初期まで続いたアールヌーボー時代のジュエリーデザイナーは、様々な影響を与えてきました。 自然界への憧れとビクトリア時代のお決まりの美学を打ち破りたいという欲求が想像力を開花させました。 何世紀にもわたる自主的な鎖国の後、日本は西側諸国との貿易を1800年代中期に再開しました。その結果、美術や美術展示品ももたらされ、その時代のデザイナーに影響を与えました。 アールヌーボー期のジュエリーデザイナーは、自然を表すために非対称(物の2つの部分が対称でない状態)やシンプルな線(不必要な要素の削除)などの日本の芸術の要素を利用して、全く新しいものを作り出しました。
アールヌーボースタイル:ウィップラッシュライン
自由曲線で描かれたラインはアールヌーボー時代の典型的なモチーフでした。 この変形の一つであるウィップラッシュラインは、しなやかで非対称なラインで、その形はしなる鞭を思い起こさせます。このラインは動き、躍動感、気品とパワーを全面に打ち出しました。 リングのデザインに絡まり合うラインを加えることで、二人の人生が一つになることの象徴を表し、アールヌーボー調の婚約指輪に格調のある時代の雰囲気を感じさせることができるのです。
アールヌーボースタイル:エナメル使い
エナメルはデザイナーが作るアールヌーボー調のジュエリーの魅惑的で夢のような外観を引き立て、このテクニックはアールヌーボー調の婚約指輪に進出してきました。 エナメル加工は、金属の基盤(支えるための物質)の上に溶解ガラスを使う技法で、紀元前1400年にまで遡ります。 その時代のデザイナーは数種類のエナメル加工技法を使用していました。
- クロワゾネ(Cloisonné):金属素地に、金属線でクロワゾネと呼ばれる小さな囲いを施し、各部分ごとに特定の色の粉末エナメルで埋め、作品を焼き上げる有線七宝の技法。
- シャンルヴェ(Champlevé):金属に模様の囲いや線を掘り、窪みに粉末のエナメルを置いて、作品を焼き上げる象嵌七宝の技法。
- バスタイユ(basse taille):彫り込む技法か浮き彫りにする技法で金属にさまざまな深さの浅い浮き彫り(バスタイユとは、フランス語で「ローカット、くりが深い」)を作り、透明なエナメルでその部分を覆う彫胎七宝の技法。作品を焼き上げると、光により異なる色調の色になります。
- プリカジュール(Plique-à-jour):銅箔あるいは同様の金属箔で裏支えした枠の模様に、粉末のエナメルをのせて焼き上げ、エナメルをステンドグラスのように見せる透胎七宝の技法。 箔は後から軽くたたいたり酸を使用したりして取り除かれるため、残ったエナメルは金属枠のみに支えられ、ガラスの様に透明になる。
エナメルは欠けることがあるため、婚約指輪に使われる場合は慎重に扱う必要があります。 マウントでエナメルがしっかりと保護されているかを確認し、できれば窪んだ場所にある方が良いでしょう。 エナメルが施されたアールヌーボーの婚約指輪をクリーニングする際は、湿った布で優しく拭きます。
エナメルが施されたジュエリーは非常に華々しくなります。
アールヌーボースタイル:自然への称賛
自然界はアールヌーボー期のジュエリーデザイナーを魅惑しました。 孔雀、白鳥、ツバメ、コウモリ、トンボや蝶々は想像力の源となりました。 デザイナーたちはそのような動物を、幻想上の審美的な生物として想像しなおすことも多々ありました。 エキゾチックな花や、からまるつるも好まれる題材でした。 これらのモチーフを使って独自のアールヌーボー調婚約指輪を新たに作ることができます。
アールヌーボースタイル:真珠
自然に憧れ、有機体にかなり魅力を感じていたその時代のジュエリーデザイナーが真珠のような有機質の宝石に惹かれていたとしても驚きではありません。 地球上の湖、川や海からとれるこれらの宝石はアールヌーボー時代のペンダントやブローチ、そして当時の婚約指輪によく使われました。
真珠は柔らかい宝石で鉱物の硬度を示すモーススケールの2.5から4に位置しています。 真珠は簡単に傷がつくため、特別なお手入れが必要です。 そのため、生涯日々指にはめて使われる運命にある現代の婚約指輪にはあまり不向きかもしれません。 この愛らしい宝石はアールヌーボー調のペンダントやイヤリングにして、婚約指輪と共に身につけられるようにするのが良いかもしれません。
アールヌーボースタイル:珍しい色の宝石
アールヌーボー期のジュエリーデザイナーたちが、自然の優美さの称賛を表現する作品を作るために使っていた、宝石学上の語彙がありました。 彼らが好んで使用した材料としては、空、海、その他の自然現象を思い起こさせる宝石がありました。 ムーンストーン、ラピスラズリやオパールなどがその例です。
ただし、アールヌーボースタイルの婚約指輪にこれらの宝石を選ぶ前に一つ注意してください。これらの宝石は美しいのですが、耐久性に優れていません。 ですから、日常の着用にこういった宝石を選択する場合は、ご自分のライフスタイルをよく考えましょう。
- ムーンストーンはアールヌーボー期のデザイナーを魅惑した宝石の一つです。 表面を波打つように光を放つ様子は、月が雲から顔を覗かせているようにも見えます。 この現象はアデュラレッセンス(青色閃光)と呼ばれています。
- オーソクレーズフェルスパーの宝石変種であるムーンストーンには多くの色味があります。 その多くは白またはグレーですが、中には青、緑、ピンク、黄色から茶色や黒に近いものまであります。 最も人気のあるムーンストーンは無色でほぼ透明から亜透明のもので、目立つインクルージョンがなく、鮮明な青のアデュラレッセンスがあるものです。
- ムーンストーンは鉱物硬度を示すモーススケールで6.0から6.5に位置します。
もし硬い表面などに当たった場合、欠けや割れが生じる場合があります。また傷ついたり酸に反応することもあります。
- ラピスラズリも、アールヌーボー期のジュエリーデザイナーが好んで使った宝石でした。 主にラジュライト、カルサイト、およびパイライトからなる岩石で、目立つカルサイトのない均一なダークブルーからすみれ色がかった青色が好まれます。 石全体に黄金色のパイライトの斑点があるため、星がちりばめられた天の川のように見え、おそらくこのような関連性が当時のデザイナーの関心を引いたのでしょう。
- 鉱物の混合度にもよりますが、ラピスラズリの硬度はモース硬度スケール上は5から6の範囲にあり、繊細な宝石に分類されています。 中には染色した石もあり、これらは時が経つにつれ色がうすくなったり、石がアセトンやその他の溶剤でこすられた場合には色がなくなってしまうこともあります。 研磨の光沢を強めたり染色を保護する目的でワックスやプラスチックでコーティングされているラピスラズリもあります。これらのコーティングは身につけているうちに、あるいは熱や溶剤にさらされた場合に劣化してしまうこともあります。
- オパールは遊色効果が有名です。 アールヌーボー期のジュエリデザイナーは、その変わりゆく色合いから、宝石の中に生命が宿っていると考えました。 有名なフランス人デザイナーのルネ・ラリックはオパールを水の象徴として、あるいは孔雀の尾にある目に似せて使用しました。
- オパールはモース硬度スケールにおいて5.0から6.5の範囲に位置します。 他の多くの宝石と比較すると硬度が低いため、傷がつかないように気をつけて身につけ、保管する必要があります。 靭性はベリープアからフェアーと評価されており、どこかに当たったりすると壊れやすいのも特徴です。 オパールは酸や苛性アルカリには近づけないでください。 通常オパールは光には安定性がありますが、強い光の熱が当たったり、金庫のように密閉された保管場所においておくと脱水状態となり、ひびや割れの原因となることもあります。
ご自身のアールヌーボースタイルの婚約指輪のデザインにカラー宝石をお探しであれば、ブルー、グリーン、バイオレット系といった涼しい色相のパステルカラーはいかがでしょうか。 また、ムーンストーン、ラピスラズリやオパールは、現代のアールヌーボー調の婚約指輪には向かないかもしれませんが、毎日身につけても問題のない耐久性のあるサファイア、スピネル、アクアマリンやトルマリンなどを使ってアールヌーボースタイルにあしらうことも十分可能です。
アールヌーボーのジュエリーに心を奪われたら、すぐにアールヌーボースタイルの婚約指輪が欲しいと思うでしょう。
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