高級ジュエリーをお買いになる際、宝石にどのような耐久性があるかを知っていると、いつ、どのようにその宝石を身に着けるかを考えるのに役立ちますが、最も重要なメリットとして、宝石の手入れの仕方がわかるということがあります。 この記事では、モーススケールやその他の要因も交えながら宝石の耐久性について分かりやすくご説明し、生涯をかけて長持ちする宝石選びのヒントをお伝えします。
すでにご存知かもしれませんが、モーススケールは宝石や鉱物の硬度を 1(最も柔らかい滑石)から 10(最も硬いダイヤモンド)までの尺度で格付けします。 しかし、硬度は宝石の耐久性を決定する要因のうちの一つにしかすぎません。
ジェモロジストは、摩耗、熱、光、家庭用化学薬品、低湿度または高湿度に宝石が耐える力として、耐久性を定義します。 それぞれの宝石には異なる特性があり、これらの要因にも異なった耐久性を示します。 宝石の耐久性を評価する際、宝石の専門家は、1)硬度、2)靭性、3)安定性の 3 つの要因を考慮します。 完璧な宝石はないので、どの宝石やジュエリーがふさわしいか選ぶときには、これら 3 つの要因をすべて考慮する必要があります。
1. 宝石の硬度 = 傷や摩耗に対する抵抗力
宝石の硬度は、その宝石が傷や摩耗にどれだけ抵抗力があるかを示す最適の指標となります。モーススケールでは、数値間の硬度の変化は比例せず、 ひっかき傷に対する硬度に基づいて相対的なスケールで宝石が格付けされます。このため、コランダム(ルビーやサファイア)のモース スケールは硬度 9 ですが、硬度 10 であるダイヤモンドはその何倍も硬いといった特徴があります。 ダイヤモンドにひっかき傷をつけられるのは、ダイヤモンドだけです。 コランダムは、コランダム自体と、トパーズ(8)、クォーツ(7)などのコランダムより柔らかいものを傷つけることができます。 トパーズは、トパーズ自体、クォーツ(7)、およびトパーズより硬度が低いものを傷つけることができます。
ヒント:ダイヤモンドは他の宝石を傷つけてしまうので、宝石箱にはダイヤモンドを例えばトパーズなどその他の宝石の隣に置くことは避けましょう。 また、モーススケールで低い硬度である柔らかめの宝石は、日常的にではなく特別な機会で身に着けることをおすすめします。 ダイヤモンドを宝石箱に保管されている場合、ダイヤモンドのお手入れについて学びましょう。
2. 宝石の靭性 = 割れや欠けに対する抵抗力
宝石の原子の結合の仕方やそれらの結合の強さによって、宝石の靭性、すなわち宝石が持つ割れや欠けに対する抵抗力が決まります。 科学の文献で使用される靭性のスケールは、フラクチャー靭性スケールと呼ばれています。 靭性スケールは、特定の結晶面に沿って 2 つの結晶面を分離するのに必要な力を表します。 この数値は、優れた靱性を持つネフライト(225,000)やジェダイト(120,000)から、靱性がそれほど高くないコランダム(600)まで、広範囲に渡ります。
一般的にダイヤモンドは、劈開面に沿った部分の数値が 5,000 であり、8,000 以上になる部分もあります。 ダイヤモンドの靭性は優れていると考えられていますが、特定の方向では簡単に壊れることがあり、強い衝撃によって割れたり砕けることがあります。ガードルが非常に薄いダイヤモンドやペアーシェイプカットとマーキスカットのような端がとがったダイヤモンドは、破損しやすく容易に欠けてしまいます。
ヒント:オパールやタンザナイトのような靭性があまり優れていない宝石は、突然の衝撃を受けることのないジュエリーに用いるようにしましょう。 例えば、宝石が誤って硬いものにぶつかるリスクが少ない、イヤリングやネックレスが最適です。 ブレスレットやリングにセットすると決めた場合は、特別な機会にのみ身に着けることをおすすめします。
ヒント:適切なセッティングを選び、宝石が欠けるのを防ぎましょう。 欠けやすい先端や角は、覆輪、部分覆輪、あるいはふくろ爪で石留めすると保護機能が高まります。
ヒント:宝石がセットされているプロングの状態が良いことを確かめましょう。 プロングが曲がったり折れたりしていると、宝石の破損し易い部分が露出され、欠ける原因となります。 ダイヤモンドが緩く留めてあると、金属製のプロングを切って外れ、セッティングから落ちてしまうことがあります。
3. 宝石の安定性 = 化学製品、熱、湿度、光に対する抵抗力
安定性とは、宝石が化学製品、光、温度や湿度の変化に対していかに耐えることができるかを指します。 宝石に損傷を与える主な原因として、以下のものが挙げられます。
極端な温度変化
ダイヤモンドは非常に安定していますが、温度が突然および極端に変化するとフラクチャーや劈開が生じたり、破損がすでにある場合はそれが広がる原因となります。 熱衝撃はこのことを表す用語で、極度の高温から低温への急激な変化により生じます。 この急激な温度変化は、アパタイト、アイオライト、クンツァイト、オパール、タンザナイトなどの宝石にダメージを与えます。
熱衝撃で砕けたダイヤモンド。 写真:GIA
湿度
周囲の湿度の影響を受けやすい宝石もあります。 オパールは、湿度が低かったり熱にさらされると水分を失い、ひびや貫入が生じる原因となります。 通常、貴重品保管室や金庫は湿度が非常に低いため、オパールは乾燥してしまいます。
一方で、水に長時間さらされると、琥珀、アジュライト(藍銅鉱)、マラカイトなどは損傷してしまいます。
熱や光の下での長時間放置
シトリン、アメシスト、クンツァイト、トパーズのような宝石は、光に長時間さらされると退色や変色をすることがあります。 また、琥珀、真珠、ジェット、サンゴや象牙などのほとんどの有機素材の宝石は、熱や光に長い間さらされると損傷することがあります。 エナメルも熱に触れると損傷します。
化学薬品およびその他の物質との接触
塩素、または香水や化粧品でさえも、真珠のような繊細で多孔質の宝石を損傷させたり変色させてしまいます。 また、塩素は金の台座を損傷する原因にもなります。 アンモニアは、マラカイト、トルコ石、サンゴなどの柔らかめの宝石の研磨状態に損傷を与えます。 料理中に高級ジュエリーを身に着けていると、宝石を熱にさらしたり熱い油を浴びさせてしまう恐れがあります。 トルコ石は、油などさまざまな液体を簡単に吸収してしまい、変色したり宝石としての価値が低下する原因となります。
ヒント:真珠のジュエリーは、身支度の最後に着けて、使用後は最初に外すように心がけましょう。 真珠のお手入れ方法については、こちらをご覧ください。
処理された宝石に対する注意点
宝石に施された処理が安定性にも影響を与えることがあります。 コーティングやフラクチャー充填のような処理は一時的であり、熱や強い化学薬品にさらされると取れてしまう場合があります。 元来靭性に乏しい宝石であるエメラルドは、亀裂を最小限にしてクラリティを改善するために、油および/または樹脂を含浸させることがよくあります。 これらの処理は、超音波洗浄機を使用したり、アルコールまたは他の有機溶媒にさらされると損傷を受けることがあります。
ヒント:ご自分の(または購入予定の)宝石にGIA レポートが付いていることを必ず確認しましょう。 宝石に処理が施されているかがレポートに記載されており、ジュエリーのクリーニングとお手入れの仕方をきちんと理解するのに役立ちます。
宝石は何千年もの間、その美しさと耐久性から貴重とされてきました。 適切にお手入れをすることにより、宝石は代々受け継がれる貴重な家宝となります。 ですので、宝石を最良の方法でお手入れし、その石独自の特性と品質を理解し、高級ジュエリーを最高の状態に保ちましょう。
最後のヒント:GIA 宝石百科事典で宝石の特性について学び、知識豊富な宝石商とともにあなたにぴったりの宝石を探しましょう。
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